BCP対策の意味と介護施設におけるBCP対策について

介護施設はもしもの時にも普段と変わらず機能していることを求められます。そのためには日常業務の中でBCP対策を準備することが必要です。ここでは介護施設におけるBCP対策について紹介します。

介護施設にも事業継続計画(BCP対策)が必要

BCP対策とは、企業が立てるイメージを持っているかもしれませんが、介護施設でも不可欠です。現在の介護の現場でBCP対策はどうなっているでしょうか。

BCP対策とは?

BCP対策とは事業継続計画のことで、「Business Continuity Plan」を略した言葉です。大災害や感染症の拡大など非常時にも平常時と変わらず介護サービスを提供し続けるための計画を言います。

有事のときほど普段どおりの業務をこなすことが難しく、スタッフは判断を迷うケースが増える可能性が高くなります。その場合にスムーズな対処ができるよう準備しておくのがBCP対策です。

介護業界のBCP対策の現状

これまで日本では数々の大きな災害が起き、被災した介護施設の機能が停止してそれまでのサービスを提供できない状態が続きました。その例をふまえて介護施設でのBCP対策の必要性が認識されています。

しかし介護の現場に限らず企業のほとんどがまだ策定していない状態で、被災の経験がないエリアほどその状態にあります。

BCP対策策定のメリット

日常の業務を行いながら、緊急時の準備をすることは経営者もスタッフも負担がかかります。しかし既にBCP対策をとっている企業からは、業務改善に役立ったと喜びの声が上がっており、有事以外にも役立つことです。

また社員間の意識向上につながり、人材育成にも効果があったとの声もあります。

福祉施設でしておくべきBCP対策

企業によって対策する事項は少しずつ異なりますが、介護施設で備えておくべきBCP対策のポイントを説明します。

人材や物資の確保

日頃の業務から人手不足になりがちな介護の現場ですが、災害時にはさらなる不足も予想されます。利用者だけでなくスタッフが被災し、業務に携われない場合もあるでしょう。利用者の居場所の把握とともにスタッフの緊急連絡先を把握し、連絡が取れるようにしておきます。

そして非常時の連絡系統やリーダー不在時の業務遂行について、スタッフが把握している必要があり、対応を統一するためマニュアルを用意することがBCP対策と言っても過言ではありません。

また各自がどの状態であれば緊急時に出勤するか、保管してある緊急用の物資をどれだけ使うかなど把握しておくこともポイントです。災害や有事の時でも介護の事業が継続できることがご入居者やその家族の信頼を得ることに繋がります。

意思や情報伝達の仕組みづくり

停電などで情報が外から入らず混乱する場合もありますが、利用者とスタッフの安全確保、事業継続のためにも、災害時の情報伝達方法や安否確認の仕方を確立しておきます。

たとえばどこに災害対策本部を設置するか、役割分担はどうするか、そして利用者やスタッフの安否確認の練習もしておくといざというときに動きやすくなります。

何を最優先にして行動するかを速やかに判断し的確な指示を出す人は施設のトップが望ましいですが、災害時にはトップやリーダーが不在の可能性もあります。その場合にも対応できる体制を整えましょう。

日常で行う被害の予防や軽減対策

介護施設でBCP対策を準備するだけでなく、日頃から利用者やスタッフと共に内容を実践して避難訓練をしましょう。避難経路も消防には届け出されていますが火災と水害では使用する経路も変わってきます。危機管理上で想定できる危機に対応するか?入居者の安全確保が最優先に考えられているかなど見えてこなかった改善点を発見でき、よりその介護施設に適したマニュアルになります。

日頃の業務の中で定期的に避難訓練をする、その結果を踏まえてBCP対策の内容を見直す流れを繰り返すことです。施設の利用者も何度も避難訓練を繰り返してれば、どう行動するかを覚えてくれるはずで、緊急時のパニック予防にもつながります。

そしてBCP対策のマニュアルは常に最新の情報を掲載しているよう努めましょう。例えもしもの状況が長い間起きていなくても、突然災害はやってきます。そのとき困らないように、常に新しい情報を準備しておくことです。

BCP対策策定で困ったら

政府が制定した事業継続ガイドラインがあり、さらに改定を加えて現在に至ります。既に全国の自治体の6割以上がBCP対策策定済みであり、それぞれの自治体では作成支援ツールなどの準備があります。

そのため、社会福祉法人の施設でも策定したいけれど方法で悩む場合は、管轄の自治体への相談がおすすめです。都道府県によっては、社会福祉施設向けの防災マニュアルを作成しているところもあり参考にしやすいです。

まとめ

多くの利用者を預かる介護施設では、緊急時に備えたBCP対策を普段から準備する必要があります。災害時にも普段と同じようにサービスを提供しなければ利用者に不都合が出てしまうでしょう。

また災害時にスムーズにスタッフが動くためにもBCP対策マニュアルを作成して全体に通達することは欠かせません。日頃の業務の中で利用者とスタッフが一緒になって避難訓練を実施し、気づいた点をBCP対策に生かしましょう。