冷凍豆腐という非常識

1.豆腐は冷凍に向かない食材

飲食業に携わる人に限らず、お料理をされたことのある方なら、豆腐を冷凍すると味や食感が別のものなってしまうことはご存じの方も多いかと思います。

この性質を利用してできたものが高野豆腐ですね。

こうした背景もあり、豆腐は冷凍に向かない食材、という認識が一般的です。

スーパーマーケットやコンビニを見渡してみても、色々な冷凍食品がある中で、豆腐一丁をそのまま冷凍したものは見かけません。

豆腐の冷凍が難しいというということに加えて
安価な豆腐をあえて冷凍で保存する、という需要が低いということもあるかもしれません。

ですが、例えば麻婆豆腐のような完調品としての豆腐の冷凍需要はあるのではないでしょうか。

冷凍技術の進歩により、ひと手間加えることで、上記の需要を満たすことが可能になりました。
今回の記事ではその内容をお伝えしたいと思います。

その前に。

そもそもなぜ冷凍すると食材の品質が変わってしまうのか、ご存じでしょうか?
まだ知らないという方の為に、まずはその紹介をしたいと思います。
ご存じの方は3.まで読み進めてください。

2.冷凍中に食材内で起きていること

食材は凍り始めると、細胞内に氷の結晶を生成します。
この結晶はおおよそ0℃から-5℃の温度帯でもっとも大きく生成されます(この温度帯を最大氷結晶生成帯と呼びます)。
冷凍時、この温度帯にとどまる時間が長いほど結晶は大きく生成され、それだけ細胞を破壊します。
破壊された細胞からは、解凍時に旨味と水分が流出し、品質の低下を招きます。

つまりこの温度帯をいかに素早く冷やしきるかが、食材の持つ品質を大きく左右すると言えます。

では、どうすれば素早く冷凍することができるのか。
非常に有効な手段として液冷式急速冷凍機が挙げられます。

3.液冷式急速冷凍機とは

液冷式急速冷凍機の中には、ブライン液と呼ばれるおよそ-35℃まで冷却されたアルコール水溶液が入っています。

その中に冷凍したい食材を包材に包み、浸すことで熱を奪い冷凍するものです。

-35℃の液体が直に熱を奪う構造ですから、最大氷結晶生成帯を素早く通過することが可能です。

4.冷凍に向かない豆腐 その冷凍方法とは


豆腐を冷凍する上で、2つポイントがあります。
ひとつは、ある程度の大きさまでカットすること(麻婆豆腐の豆腐くらいの大きさが目安です)。
もうひとつは、あらかじめ鍋で5分程度茹でておくことです(※茹でた後は、豆腐同士を離してください。水分が抜けているため、豆腐同士がくっついてしまうことがあります)。

(↑くっついてしまうと剥がすときに豆腐が崩れてしまいます)

2つのポイントを押さえた上で液冷式急速冷凍機に入れて頂ければ、解凍時再現性の高い冷凍豆腐になります。

今までで出来なかった冷凍豆腐が、ひと手間必要ではありますが、実現しています。
冷凍技術は日々進化しています。

できない、から、できるへ。

これまでの非常識が良い意味での常識になるように、当ラボでも研究を続けていきます。

【編集後記】

上記の冷凍の手順を踏まえて、当ラボでも冷凍豆腐に挑戦!

正確には上記処理をした豆腐を使った麻婆豆腐を凍らせて、解凍してみました。

添付画像はその時の麻婆豆腐です。

画像からは伝わりつらいですが、豆腐らしい食感を残した

とても美味しい麻婆豆腐ができました♫