HACCPとは?クックチル・クックフーズとの相性について

HACCPという言葉を耳にしたことはないでしょうか。現在では、さまざまな業界においてHACCPによる衛生管理が行われています。ここでは、HACCPの概要や、導入することで得られるメリットなどをまとめました。また、新たな調理法といわれるクックチルやニュークックチル、クックフリーズが、HACCPと相性がよい理由についてもご紹介します。

HACCPとは

もともとは、アメリカで宇宙食の安全性を確保する目的で誕生した衛生管理システムのことです。Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字をとり、HACCPと略されるようになりました。日本語では、危害要因分析重要管理点と訳されます。

食材の仕入れや調理、提供に至るまでのあらゆるプロセスにおいて、リスクを軽減するためのモニタリングを行うシステムです。従来の衛生管理においては、スタッフの経験や勘などに頼ることが多かったのですが、HACCPではあらかじめ危害の発生要因を明確にします。

その上で、危害が生じた時の影響力などもリスト化し、管理すべき重要なポイントを定めた上で管理、記録を行っていくのです。すでに、アメリカやカナダなどの諸外国では、HACCPが義務化され、2020年6月からは日本でも制度化が施行されます。それまでの期間は猶予期間とされていますが、制度化に向けてなるべく早い対応が望ましいです。

導入のメリット

HACCPを導入することで、どのようなメリットが得られるのかはもっとも気になるところでしょう。以下、HACCPの導入により得られる具体的なメリットをまとめました。

迅速な対応が可能

仕入れから調理、提供などあらゆるプロセスにおいて、危害の発生するリスクを分析します。いつどのようなリスクが生じる可能性があるのかを明確にし、万が一それが起きた時の対処法も定めておくため、何か起きた時も迅速な対応が可能となるのです。

たとえば、仕入れた食材の下処理段階で危害が発生したとしましょう。従来の衛生管理では、この段階で食品の汚染などが生じていたとしても、気づかないことが少なくありません。調理や提供の段階、もしくは提供してから気づくことも多く、大問題に発展してしまう恐れがあります。

HACCPを導入していれば、仕入れから下処理の段階においてもモニタリングを行うため、こうしたミスは起こりません。この段階で対処ができるため、問題が小さいうちに適切な対処をして解決できるのです。

社員全員の衛生管理に対する意識向上

HACCPの導入には、一般的な衛生管理が行われていることが前提となります。また、HACCPは組織全体での取り組みになること、そして、導入時に12手順と7原則に基づいた行動を取ることと体制を作る必要があるため、一部社員だけでなく、組織全体の衛生管理意識を向上させることができるのです。

衛生管理への意識が高まることで、食の安全を高いレベルで確保できます。

売り上げの向上

HACCPは今後義務化されますが、早めに導入がおすすめの理由として、売り上げの向上ができるからです。すでにHACCP認証を受けている企業では、売り上げ増加が起きています。その理由は、「企業の信頼」。HACCP認証は、安全性をクリアしている証でもあります。このため、同じ企業であってもHACCP認証を受けている所と取引したいと考える事業所が多いのです。

食品を扱う工場や、お客さんに料理を提供する飲食店、介護施設や医療施設などでは、特に食の安全性に注力しなくてはなりません。これを考えるとHACCPを早めに導入している団体は、安全意識が高いかつ、安全性が確立されていると周囲の企業から捉えられるのです。

利益率向上

HACCPを導入することで利益率アップを見込むこともできます。HACCPでの管理は、ハザード分析を徹底的に行うため、綿密な生産計画を立てることが必須です。しかしその生産計画を基に作業を進めることで、全工程が明朗になります。

企業によっては、各担当との連携が計りにくく、各担当でないと分からない、いわゆる人依存によるブラックボックス化が起きてしまっていることも。このため、ムダな作業が起きていても誰も気がつくことができません。

HACCPによる管理方法で全工程が誰の目にも明らかになることで、管理を簡潔なものにし、これまで起きていたムダを省くこともできます。

さらに、HACCP導入によって、製品にトラブルがおきた場合の原因究明と改善対策を迅速に行えるため、PDCAを回すスピードを上げることができます。

クックチル・クックフリーズの導入でHACCPが可能に

クックチルやクックフリーズなどの新たな調理法は、衛生管理がしやすいことで知られています。クックチルは料理を急速冷却し、クックフリーズならば急速冷凍し、提供前に再加熱する仕組みのため、従来の調理よりも衛生的です。

クックチルやクックフリーズでは、仕入れから下処理、加熱調理、冷却/冷凍、保存、再加熱、提供とプロセスが明確にわかれています。マニュアル化もしやすいため、衛生管理もしやすいのです。HACCP導入に向けて、まずはクックチルやクックフリーズの導入にも目を向けてみましょう。

まとめ

今後は、あらゆる業界においてHACCPの導入が求められていくかもしれません。介護施設などにおける、食事提供加算を受けるにも、HACCPは必要であるため、この業界で開業を検討している方も、ぜひ目を向けてください。