旬を閉じ込めて6次産業化へ

今回の記事では、6次産業化に関してご紹介します。
6次産業化とは、1次産業を担う農林漁業者が、自ら2次産業である「加工」や3次産業の「販売」を手掛け、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上させる取組のことです。

各産業の数字を掛け合わせ、1×2×3=6次産業と呼称されています。

加工販売される商品には様々な物があり、一例として、3J1Dと呼ばれるジャムやジュース、ジェラート(3J)とドレッシング(1D)があります。

容器やデザイン、価格も生産者が決定

果物等の青果を収穫しそのまま出荷する際は、市場とバイヤーに価格の決定権がありますが、6次産業化される場合、加工した商品をいくらで販売するのか、価格の決定権は生産者にあります。
丹精込めて作った商品の「売る価格」を生産者の価値観で決めることができるのです。

■6次産業化の「付加価値」を考える■

6次産業化を検討される生産者が一番に考えるのが「出荷できない青果物を利用したい」という点です。
傷みが早く日持ちしない物や、サイズや形が規格に合わない物は、収穫後出荷されることなく廃棄されてしまいます。
また間引きによって廃棄される作物の量も、軽視することはできません。
そのような規格外品や間引きされた作物は、活用されることは無いに等しいと言えます。

仮に1日に200kgのイチゴを収穫した場合を考えてみます。
収穫量の10%に当たる20kgが廃棄されたと仮定すると、収穫日が月に20日間とした場合、400kg/月の廃棄ロスが発生します。
収穫期間が5か月であれば、400kg×5か月=2,000kgの量が廃棄されることになります。
もしこのイチゴを廃棄せずにジャムに加工すると、1個200gのジャムであれば、廃棄される5か月分のイチゴで1万個のジャムが製造できます。
仮にこれを1個500円で販売すると、500円×1万個=500万円の売上が見込めます。
このように廃棄されていた物に大きな付加価値が生まれる可能性があります。

規格外の間引き苺を有効活用

■雇用創出と地域活性化■

加工品の良いところは、形を変えて別の商品にすることができるため、傷物や規格外品の青果でも問題なく使用できる点にあります。

前述のケースでは5か月で2,000キロの廃棄が出る試算でしたが、多くの農家においても、廃棄ロスについては同様の悩みを抱えていらっしゃいます。

そうした悩みを抱える農家同士でネットワークを構築すれば、その分多くの出荷のできない青果を集めることができ、集まる量が増えれば、加工品としての商品をたくさん作ることができます。

商品の生産量が増え事業が拡大することが雇用創出に繋がり、また地元の青果を活用した商品が流通することで地域の活性化に繋げることができます。

 

■通年稼働のハードル■

収穫時期の限られた青果を通年に渡り利用・加工していくにはどうすれば良いのか、懸念されるところかと思います。

こうした課題の解決には急速冷凍の技術を活用することが有効です。

旬の時期に採れた青果を大量に冷凍保管しておくことで、収穫時期を問わず、いつでも様々な加工品に利用することができます。

必要な時に必要な分を利用可能にする急速冷凍

イチゴの急速冷凍保存

ただし、大量に保管できるからといって、多様な商品展開を考えることには注意が必要です。

理由は、商品に合わせた加工設備や包材も増やす必要があるからです。

また、保健所等への申請も必要となります。6次産業化を検討される際は、まずは少ない商品点数の範囲で検討を進められることがリスクの軽減に繋がります。

■本記事のまとめ■

6次産業化を進めていくにあたっては、事業を通年稼働させることが望ましいです。

そのためにはどの程度の収穫量が必要となるのか、その収穫量を確保できるのかを考えてみましょう。

その上で加工品として商品化する物の検討を進めていきます。

商品の出来上がり数量を明確にした上で販売価格を試算し、事業の収支をシミュレーションしてみます。

その後は、必要な設備機器の選定、容器やパッケージのデザインを検討しましょう。

商品化までの試作品製造や生産量テスト等を実際に行って6次産業化の実現に向けて具体化していくことが重要です。

本記事をご覧いただき6次産業化にご興味を持たれた方は、各自治体のサポートセンターにご相談されることをお勧めします。専門家の方のご意見を聞くことができますのでぜひ活用してみてください。

フリーズラボでの青果加工の様子はこちらの動画をご覧ください。
冷凍イチゴをジャムへ加工