【検証実験】焼き芋は加熱温度や冷凍方法で、糖度に違いが出るのか?


みなさんこんにちは、フリーズラボ(freeze-LaBo)です。
フリーズラボは、千葉県にある急速冷凍技術を用いた実験室で、「食と生活にイノベーションを起こすこと」をミッションとしています。

今回は、農家さんからサツマイモを頂いたので、専門店も目にするようになった素朴なスイーツ、焼き芋を検証してみました。検証テーマは、調理方法(加熱温度)や冷凍方法を変えることで焼き芋の糖度に違いは出るのかどうかです。

農作物は形や大きさによって、出荷されずに食品ロスとなることが多いので「加工品として価値を生み出せるか?」といった観点も踏まえて、さっそく実験しました。

 

いざ、実験開始!


今回実験に使用したサツマイモは「べにはるか」。加熱後に急速冷凍と緩慢冷凍にて冷凍し、糖度の違いを計測しました。
計測にあたり、いくつか条件を変えて実行しました。

≪計測条件≫
【試料】
9本のサツマイモに、それぞれA~I(9種類)のアルファベットを振り分け、グループ化しました。
急速冷凍用および緩慢冷凍用として、1本につき2個分の試料を採取(9本×2個=18試料)。採取箇所はサツマイモの上部4センチと下部4センチとしました。

【糖度測定箇所】
試料断面の中心部をスプーンにて、幅1センチ×深さ0.5センチ程度えぐり、糖度測定用としました。

【試料グループ】
グループ①:試料A、B、C
グループ②:試料D、E、F
グループ③:試料G、H、I

【加熱に使用した器具】
ガススチームコンベクションオーブン

【加熱方法】
グループ①スチーム80℃で60分加熱後、オーブン250℃で10分加熱
グループ②スチーム90℃で60分加熱後、オーブン250℃で10分加熱
グループ③オーブン180℃で加熱、芯温が70℃を60分キープ

上記方法にて加熱後、急速冷凍と緩慢冷凍に分けて冷凍し、解凍後の糖度を糖度計にて計測しました。

 

加熱温度と冷凍方法による違いは出るのか、結果はいかに!?


【計測結果】

上記の結果を得ることができました。

 

興味深い結果から、見えてきたことは…


今回の計測から見えてきたことは、以下の点です。
・グループ②が最も高い糖度を示し、グループ①が最も低い糖度を示しました。
・急速冷凍に比べ、緩慢冷凍の方が糖度が高くなる傾向が見られました。

 

同じ加熱方法なのに、糖度の違いはなぜ?


サツマイモの糖度が増す理由は、サツマイモがもつデンプンが糊化し、そこにβアミラーゼが作用することで、麦芽糖が発生するからです。

身近な例に「ご飯」があります。ご飯はお米に水と熱が加わったことで、デンプンが糊化したものです。ご飯を咀嚼していると甘みを感じますが、これは糊化したデンプンであるご飯に、唾液中のアミラーゼが作用することで麦芽糖が発生しているからです。サツマイモにも同様の現象が起きています。

デンプンが糊化する温度帯は品種にもよりますが、概ね70℃前後と言われています。また、βアミラーゼは80℃を越えると活性が大きく下がります。つまり70~80℃の温度帯に長く留まるほど、デンプンの分解が進み麦芽糖が多く生成されるということになります。

測定結果を見ると、90℃で60分加熱したグループ②が最も高い糖度を示しています。90℃という温度のみを注視すれば、βアミラーゼが不活性となっていると考えられ、糖度はむしろ上がらないのではと推測されます。

しかし、電子レンジのように極めて短時間の内に加熱されたわけではありません。
スチームにより徐々に90℃まで加熱されています。90℃に到達した時点では、βアミラーゼは不活性になっていましたが、徐々に加熱されたため、結果的に麦芽糖の生成される温度帯に長く留まることができ、糖度が増したのだと推測されます。

また、急速冷凍よりも緩慢冷凍の方が糖度が高かったことも、同様の理由と推測されます。急速冷凍は素早く熱を奪ってしまうため、βアミラーゼが作用し麦芽糖が生成される温度帯を短時間のうちに通過してしまったため、糖度が若干、低くなったと考えられます。

 

結論:加熱時間と冷凍方法によって、糖度の違いは起こりえる


結論として、加熱温度と冷凍方法によって、サツマイモの糖度の違いは起こりえることがわかりました。

70℃~80℃の温度帯に長く留まるほど、麦芽糖が多く生成され糖度は増加するため、加熱されたサツマイモは急速・緩慢を問わず、すぐには冷凍せず温度が下がるのを待った方が良いでしょう。

十分に麦芽糖が生成されたのち、冷凍技術を活用することで生産性を上げる方が良さそうです。

加熱されたサツマイモは常温であれば2日程度、冷蔵保存でも4日程度しかもちません。長期保存する際は冷凍が良いでしょう。

販売をされている事業者様なら、生産性を考慮すれば3%の糖度より時間当たり生産性を考え、やはり緩慢冷凍ではなく急速冷凍が適していると考えられます。

 

加工品としての価値創出


実験後、焼き芋とスイートポテトをスタッフで試食してみました。どちらも冷凍による劣化がまったく感じられず、非常に美味しく頂くことができました。

形や大きさなどにより、出荷できず廃棄してしまうのではなく、焼き芋やスイートポテトのような加工品にし、冷凍保存することで、食品ロス削減だけでなく販売機会という価値を創出することができます。

freeze-LaBoでは、食品を冷凍することのみに留まらず、冷凍に伴う食感・水分量・糖度・塩分の計測や、冷凍に即した調理方法、適切な解凍方法等、いくつもの観点から冷凍実験を行っています。より美味しい冷凍食品をお客様にお届けする、食品ロスを削減する、働き方を改善する等、こうした課題解決のお手伝いをするhttps://youtube.com/shorts/kODcYnG1K_4?feature=shareべく、日々実験に取り組んでいます。

あの食材を冷凍したらどうなるの?
こんなテーマで実験して欲しい!
など、リクエストをお待ちしております。
ご興味いただけましたら、webサイト問合せフォームよりお気軽にお問合せください。

本記事の実験の様子のショート動画(47秒)も是非ご覧ください。

 

本記事を最後までご覧いただきありがとうございます。
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